福井県池田町立池田中学校2年の男子生徒(当時14歳)が男性担任らの厳しい指導や叱責を苦に自殺した日から、14日で3年となる。男子生徒の母親が取材に応じ、「息子のことを考えない日はない」と月日がたっても消えることのない苦しみを吐露した。また遺族の代理人弁護士は12日、町と県に対して国家賠償請求したことを明らかにした。【塚本恒】
母親は「3年がたった今でも、ふとした瞬間に息子の姿を思い出す」と語った。おむつのテレビCMを見た時には幼いころの姿が浮かび、バレンタインデーには学校でもらったチョコレートをうれしそうに分けてくれたことを思い出した。
今も仏壇の前には男子生徒が好きだったお菓子やマンガなどを欠かさず供えている。「食べることが好きな優しい子でした。どうしてこんなことになってしまったのかと、ずっとずっと考え続けている」と涙をこぼした。
男子生徒は2017年3月14日朝、校舎3階から飛び降り死亡した。外部有識者らによる町の調査委員会は同10月に公表した報告書で、担任や副担任から受けた厳しい指導・叱責を原因とする「自死」だったと結論づけた。報告書では担任の指導について「職員室や校門前など他の生徒らの面前で怒鳴りつけることもあった」と指摘している。町は19年2月に教育大綱を改定し、学校と地域や家庭が連携を強化することなどを盛り込んだ。
県教育委員会は当時の担任や校長らについていまだに処分を下していない。「具体的にどんな指導があったのか、担任はどうして叱責したのか、息子は何に苦しんだのか」と町に問い続けても、明確な返答を得られぬままだ。昨年夏ごろから県や町との交渉のため弁護士に相談。「真実が分からなければ再発防止もできないはず。息子の死をなかったことにはできない」と行政への不信感は強まるばかりだ。
代理人を務める諸隈由佳子弁護士によると、昨年12月に県と町に対して国家賠償請求を求める文書を送達した。請求金額は非公表。賠償だけでなく具体的な再発防止策の策定や関係者に聞き取りをした上での事実解明なども求めているという。諸隈弁護士は「遺族の一番の願いは事実究明と再発防止。訴訟になるかどうかは今後の交渉次第だ」と説明した。